#Silhouette Extra Tale 改訂版 第2章「思い出の地」後編 !v27=2 !v28=1 !v35=2 !v36=1 !wait60 !mvゲームセンター !bgmゲームセンター !wait30 @200 よしっ、到着! @102 いや、到着ってさ……。 ここ……ゲーセンだよね? @402 私たち……中学校に 行くんじゃなかったんですか? @200 ああ、もちろん中学校にも行くぜ。 でも、その前に…… 一つ試したいことがあるんだ。 @100 試したいこと? @200 再現だよ、再現。 @400 再現? @200 ここでもう一度、あの時と同じように 三人でプリクラを撮るんだ。 もしかしたら、その\r[弾,はず]みで 何かを思い出すかもしれないぜ。 @102 う〜ん、そうかなぁ……? ちょっと無理があると思うんだけど……。 @202 そう言うなよ……。 これでも、オレが無い知恵絞って 真剣に考えた方法なんだぜ。 プリクラの機械がまだ残ってることも、 ネット使って確認したんだからよ。 @102 そこまで調べたんだ……。 @400 ……。 !wait20 でも、確かにいい方法かも しれませんね……。 シシトさん、せっかく来たんですから、 三人で一緒に撮りませんか? @200 ほら、セトも乗り気みたいだしさ。 文句言ってないで、早く撮ろうぜ。 @102 ……。 はいはい……。 !se(Action)学内歩き @0 !mvnil !wait60 @400 ……\sえーと。 立ち位置、これで合ってますか? @200 ああ、それでいいぜ。 シシトは、もうちょい右な。 @100 ……このくらい? @202 あっ、違う……それ逆だ。 シシトから見ると、左だな……。 @102 じゃあ、こっちか……。 @402 徹底してますね……。 @200 ま、再現だからな。 ……\sよしっ、\sそれでいいぜ。 @100 じゃあ、さっそくボタンを……。 !wait40 !bgm @0 \f[16]ブーン…… @200 ……\sんっ? !wait30 !bgm緊急事態 @201 うおっ、ハチだ! ハチがいるぞっ!! @102 えっ、ハチ……? @0 ブーン、ブーン…… !se(Action)跳ね @104 うわっ! でかっ! !se(Action)跳ね @401 キャアアアアアーッ!! @202 お、おいっ、二人とも暴れるなよ! とにかく、早く外に出ろ! @102 そ、そうだね……。 早く外に……。 @0 ブーン、ブーン…… !se(Action)跳ね @104 うわっ! こっち来るな!! !se(Action)ミス !wait6 !se(Action)ミス !wait12 !se(System)決定 @1 『撮影を開始します』 @101 あーっ! ミスってボタン押しちゃった! @201 うおーい!! @402 シ、シシトさん、落ち着いてください! とにかく、まず外に……。 @0 ブーン、ブーン…… !se(Action)跳ね @401 キャー! 来ないでー!! !se(Action)ミス !wait6 !se(Action)ミス !wait12 !se(Shooting)撃破A !wait8 !se(Shooting)撃破C @201 \f[32]いっでえええぇぇぇー!! @401 ああーっ!! き、岸さん、ごめんなさーい!! @201 チクショー!! 昨日からぶつかりまくりだぜっ!! @104 とりあえず、このハチ何とかしてっ! @0 ブーン、ブーン…… !wait25 !se(Action)殴打 ブスッ !se(Action)爆発音 @105 \f[32]ぎゃあああぁぁぁー!! @401 シシトさんが刺されたー!! @201 いいから早く出ろー!! !wait30 !bgm !se(System)キー3 @1 カチッ !se(System)ピロロロリン 『撮影が完了しました』 『このまま、しばらくお待ちください』 !wait60 ジジジジ、ジ…… @105 @401 @201 !wait20 @0 !mvゲームセンター !bgmコミカル @102 ……。 @402 ……。 @202 ……。 酷い顔だな、オレたち……。 @402 昔撮ったプリクラと、 似ても似つかないですね……。 @102 ……で、どうする? もう一回撮り直すの? @202 いや、もういいぜ……。 なんか妙に疲れたし……。 @402 ……そうですね。 @102 はあ、やれやれ……。 結局、僕の刺され損か……。 @402 というか、刺された場所は 大丈夫なんですか? あんな大きなハチでしたし、 早く病院へ診せに行った方が いいんじゃ……。 @100 あー、僕は大丈夫。 まだ痛みは残ってるけど、 これくらいなら特に問題ないよ。 @200 トラックに\r[轢,ひ]かれるのと比べたら、 ダメージは全然軽いもんな。 @100 うん、そうだね。 @401 基準がおかしいですよ、それっ!! @102 いや、はっはっは……。 !wait20 @200 ……\sまあ、でも。 久しぶりに来たんだし…… この写真も、いい記念になるぜ。 @102 でも、この顔はさすがになぁ……。 @200 いやいや、だからいいんだろ? こういう変な写真の方が、 後々まで印象深く残ってるもんさ。 @102 過去の思い出を探しに来て、 未来への汚点を残すハメになったか……。 @200 うまいっ、座布団1枚! @100 受け取りを拒否します。 @200 じゃあ後で1000円払えよ。 @104 なんでそうなるの!? @200 座布団受け取りのキャンセル代。 @102 理不尽すぎる……。 @200 じゃあ受け取れよ。 @102 座布団ないじゃん。 @200 バカには見えない座布団。 @102 ……僕はバカ確定か。 @202 おいおい、そこで話を切るなよ……。 @101 じゃあ僕にどうしろって言うんだ!? @200 いや、だから、ここはさ……。 @1 ←(くだらない会話の応酬中) !wait40 !bgmゲームセンター @400 ……。 いいなぁ……。 @200 んっ……? @100 ……セト、どうかした? @403 あっ、その……。 二人とも、なんだか すっごく楽しそうだなって……。 @102 あっ……。 @202 オレたち、ついつい昔のノリで しゃべってたみたいだな。 @102 ははっ、そうだね……。 これも、懐かしい場所に 戻って来たせいなのかな? @400 懐かしい場所、か……。 @200 でも、それはセトにとっても 同じことなんだぜ。 なにしろ、あのプリクラは ここで撮ったやつなんだからな。 @100 このメンツが揃ってたのは 1年足らずの短い間だったけど……。 あの時、この場所には 間違いなくセトもいたんだよ。 @400 ……そうなんですよね。 その時の記憶さえあれば、 私も、二人と一緒に楽しくお話が できてたのかな……。 @100 セト……。 @404 ……\s私、頑張りますね。 @200 ……\sああ。 みんなで……頑張ろうぜ。 !wait40 @1 グ〜…… @202 おっと、悪い……。 @400 岸さん、お腹空いたんですか? @202 オレ、今日はまだ 何も食ってないんだ……。 モノレールのチケット買ったり 行き先確認したりで、飯食う暇が 全然無かったからな……。 @402 それは大変でしたね……。 @102 朝ご飯を一回抜いたくらいだし、 ちょっと大げさじゃない? @202 お前と一緒にすんなよ……。 これでも、結構体力きついんだぜ。 @400 じゃあ……時間は少し早いですけど、 お昼を食べに行きませんか? @100 えっ、いいの、セト? まだ朝ご飯食べてから、 そんなに時間経ってないよ? @402 でも……岸さん、本当に お腹が空いてるみたいですし……。 それにシシトさんだって、今日は まだ何も食べてないじゃないですか? @102 僕の場合は慣れてるから、 まだまだ大丈夫なんだけどね……。 @202 ……ってか、待て。 なんでセトが朝飯を食ってるのに、 シシトが食えてねぇんだよ? @102 それが我が家です。 @402 (……ちょっと罪悪感) @200 まっ、オレもここ終わったら 飯にしようと思ってたとこだしな……。 ってワケで、二人ともそれでいいか? @404 もちろんオッケーです! @100 僕は多数決に従うよ。 @200 じゃあ、場所はオレに任せてくれ。 いい店に連れてってやるぜ。 @102 さすがは料理屋の息子…… 近所のライバル店はチェック済みか。 @202 別にライバル店とかじゃねーよ。 単純に、おいしいって 評判だった店に行くだけさ。 @100 まあ、リョウヘイが言うなら 間違いは無いだろうね。 @200 ああ、期待してくれていいぜ。 @404 はいっ! 楽しみにしてます! @200 よーし、じゃあさっそく行くか。 @100 りょうか〜い。 !se(Action)学内歩き @1 スタスタ ……。 !wait40 !bgm !wait40 \f[16]「……ふうっ」 !wait60 !bgmちょっとマズい @411 ビ……ビックリしたぁ……。 まさか……あの三人組が こんな場所にやって来るなんて……。 ……。 @410 危ない、危ない……。 あやうく、ゲーム好きってことが バレちゃうとこだったよ……。 まあ……シシト君は もう知ってるんだけどね……。 @1 ……。 !wait30 @410 ……。 そろそろ……大丈夫かな? !wait40 @412 ……\sよ〜し。 それじゃあ、気を取り直して もう一回いってみよ〜♪ @1 ガチャガチャガチャ…… !mvnil @0 !mv !wait40 !bgm !wait60 @1 そして、昼飯をすませた後……。 !wait40 @0 !mv薙島高校 !bgm高校 @1 僕たちは、再びこの場所に 足を踏み入れた……。 !wait30 @200 お〜、めっちゃ懐かしいな〜。 このオンボロ校舎、相変わらずだぜ。 @400 ここが、シシトさんや岸さん……。 それに……私が通っていた 中学校なんですね……。 @200 ああ、そうだぜ。 七影区立、七影中学校……。 オレたちの……母校だ。 @102 ……でもさ。 いくら母校でも、勝手に入ったら 色々とマズいんじゃない? @200 それなら心配ないぜ。 ここの教頭に、オレたちが 今日来ることは伝えといたからな。 @400 教頭先生? @200 元々、オレたちに体育を教えてた 先生だったんだけどさ……。 今は出世して、教頭になったんだ。 @400 へえ〜。 @100 あの先生……いつの間にか 教頭になってたんだ……。 @200 まっ、この学校一筋で、 もうかなりの歳だったからな……。 遅かれ早かれ、そういう立場に なってたんだと思うぜ。 @400 でも……そんなすごい先生と よく連絡が取れましたね。 @200 先生、昔はウチの店によく来る 常連さんだったんだ。 だから、オレとは互いに顔見知りで、 連絡も取りやすかったのさ。 @400 なるほど。 @102 こういう時、リョウヘイは ホント頼りになるね。 !wait30 !se(Action)学内歩き @1 スタスタ @320 ……\sむっ。 お前……まさか、岸リョウヘイか。 @100 おっ、噂をすれば……。 @200 お久しぶりっす、先生。 @102 ちなみに、顔グラは仕様です。 @402 (シシトさん、どこに向かって  しゃべってるんだろ……) @320 ……ふんっ。 久々に会ってみれば、いっちょ前に 髪なんぞ茶色に染めおって……。 @202 別にいいじゃないっすか。 オレ、もう高校生なんですよ? @320 ああ、そうだな。 指導ができなくて非常に残念だ。 @202 おー、こわ……。 @100 先生、お元気そうで何よりです。 @320 そういうお前も、ずいぶんと久しぶりだな。 「七影中の暴走列車」こと、村上シシト。 @102 先生、その恥ずかしい肩書きは よしてくださいよ……。 というか、まだ覚えてたんですか? @320 ここまで印象の強い生徒は、 イヤでも忘れんさ。 そんな気の抜けた態度も、 実に懐かしいものだ。 !wait20 それと……。 @400 ……っ! @402 あっ、こんにちは……。 お久しぶり……です……。 @320 ……\s犬山セトか。 岸の方から話は聞いている、 色々と大変みたいだな。 @402 はあ、まあ……。 @320 しかし、来たのが今日でよかったな。 色々な予定が重なって、 今、校内で活動している生徒は ほとんどいない……。 責任は私が持つから、 じっくりと見学していきなさい。 @404 はっ、はいっ! ありがとうございます、先生! @320 では、私は職員室に戻ってるからな。 もし何か用事があったら、 遠慮なく来てくれ。 @100 はい、分かりました。 @200 了解っす。 !se(Action)学内歩き @1 スタスタ !wait30 @400 ……。 ちょっと怖そうな気もしたけど、 いい先生ですね……。 @200 怒る時は怒るけど、困ってる生徒には 協力を惜しまない人だったからな。 オレたち生徒の間では、 結構、人気があったんだぜ。 @100 あの先生、生徒一人一人のことを しっかり見てるんだよね……。 名前とかもすぐ覚えちゃうし……。 @400 確かに、そんな感じがしましたね。 シシトさんや岸さんのこと、 しっかり覚えてるようでしたし……。 @200 シシトの場合は、先生どころか 学校中で有名だったもんな。 @102 あまり好ましくない意味でね……。 @400 ……私のことも、ちゃんと 覚えていてくれたんでしょうか? @100 うん、きっと覚えてると思うよ。 セトだって、中学校の中では 結構有名だったからね。 @200 だよな、シシトと違って いい意味で有名だったぜ。 @102 前半は余計だよ、リョウヘイ……。 @402 えっ、それってどういう……。 @100 セトはさ、昔からすごく 勉強ができる子だったんだよ。 @200 そうそう、テストで校内1位とか 取ったりもしてたんだぜ。 @400 私が……ですか? @100 うん。 @200 オレたちの学年では、シシトが やたらと目立ってたけど……。 セトの学年だったら、たぶん 一番有名だったんじゃねぇかな? @400 えっ? でも、私は二人と同じ学年じゃ……。 @102 ああ、そういえば、 まだ言ってなかったっけ……。 @200 セト、飛び級で中学卒業した瞬間に 高2になったんだぜ。 @401 ええーっ!? わわっ、私……飛び級なんて しちゃったんですか!? @102 まあ、よくよく考えれば 十分に納得できることだよね。 @202 それだけ、セトは中学時代から すごかったんだもんな……。 あんま勉強できないオレにとっちゃ、 羨ましい限りだぜ、ホント……。 @402 昔の私、そんなにすごかったんだ……。 @102 今も十分すごいと思うけどね……。 @200 まっ、そんな中学時代だったんだし、 思い出だってたくさん残ってるはずだぜ。 ってワケで、さっそく入ってみるか。 @404 はいっ! !se(Action)学内歩き @0 !mvnil !wait60 !mv1F廊下 !wait30 @400 ……\s不思議。 この場所、なんだか すごく懐かしい気がする……。 @100 おっ、さっそく効果アリ。 @200 そりゃあ、3年間ずっと 通い続けた校舎だもんな……。 高校入ってまだ1年目のセトには、 特に馴染み深い場所なんだと思うぜ。 @100 ここなら、確かに何かを 思い出せるかもしれないね。 それで……どうかな、セト? @400 う〜ん……。 !wait40 @402 ……。 確かに……懐かしいとは 思うんですけど……。 それ以上は、よく分かりません……。 @102 ……そっか。 @200 まっ、最初からこれだけ いい感じなんだし……。 適当に歩いてりゃ、何かの拍子で 思い出せるに違いないさ。 @100 後は、昔を思い出せるモノが たくさん残ってればいいんだけどね。 何かの記念品とか、写真とか……。 @200 それなら、学校のあちこちに 今も残ってるはずだぜ。 例えば、そうだな……。 !wait30 おっ……\sあった、あった。 二人とも、アレ見ろよ。 @100 んっ……? @400 ……\sあれっ? 廊下の一部が磨り減って、 なんだか、道みたいになってる……。 @104 (げっ、これは……!) @402 ……あの〜。 これ、一体なんですか……? @102 あー、えーと……。 !bgm @200 「シシトロード」だぜ。 !bgmコミカル @401 シシトロード!? @200 シシトが遅刻ギリギリで登校する時、 あまりにもダッシュが速くてさ……。 廊下の表面が少しずつ削られて、 いつの間にか一本の道になったんだ。 @401 いくら速くてもこんな風には なりませんよ、絶対!! @202 それがこうなっちまうのが シシトなんだよなぁ……。 @102 ってか、どうしてこんなのが まだ残ってるんだよ……。 廊下がこんな状態なのに、 補修すらしないのか、ここの学校……。 @200 補修しないんじゃなくて、 させなかったんだよ。 シシトが引っ越した後…… オレたち懸命に署名活動やって、 補修工事が行われないようにしたのさ。 @104 はあーっ!? @401 署名活動!? @200 ちなみに、セトはもちろん、 学校中の連中が署名してくれたぜ。 @101 どうしてそんな事をするんだよ!? @200 もちろん、学校の重要文化財を 簡単に失うワケにはいかねぇからさ。 今やシシトの存在は、七影中学に 語り継がれる伝説なんだぜ。 @402 確かに……シシトさんなら、 伝説にもなれそうな気がしますね。 @102 ……やれやれ。 こうやって……僕の不名誉な伝説は ずっと語り継がれていくのか……。 @202 いや、足が速いのは 別に不名誉じゃないだろ? むしろ、お前にとってみれば 成長記録みないなモンじゃねーか。 @400 成長記録? @200 シシトって、入学当初から 確かに足は速かったんだけど……。 中学いる間もどんどん速くなってって、 いつの間にやら、廊下の傷跡も ここまで大きくなったのさ。 @400 へえ〜。 @202 そうして、今じゃ2キロを3分で 走るまでになってるし……。 お前……やっぱバケモノだぜ。 @101 何がバケモノだっ!? やっぱり不名誉じゃないか!! ってか、中学以来の友を バケモノ呼ばわりするなよっ!! @200 トラックに\r[轢,ひ]かれて平気だった奴を、 バケモノ以外にどう呼べばいいんだよ? @105 うおーっ!! 否定できねぇぇー!! !wait20 @200 あっ、ちなみに……。 シシトが残した足跡なら、 他にも色々残ってるはずだぜ。 せっかくだから、案内してやろうか? @400 そうですね、それで何かきっかけが 掴めるかもしれませんし……。 じゃあ、案内してもらってもいいですか? @200 おうっ、もちろんだぜ。 ビックリして腰を抜かすなよ。 @404 はいっ! @102 (……やっぱ来なきゃよかったかも) !mvnil @0 !mv !wait40 !mvトイレ !wait20 @200 おー、これも残ってたか。 セト、このドアに書いてある 落書きを見てみろよ。 @400 えーと……。 ……。 @402 ……。 シシト……専用……? @200 ああ、そうさ。 ここ、シシト専用トイレなんだぜ。 @401 ええーっ!? で、でも、ここ女子トイレですよ!? @100 ちなみに、背景はイメージです。 @401 いや、それよりも、これは一体 どういう事なんですか!? @102 昔、ちょっとした手違いから 女子トイレを使ったことがあってね……。 出てきたところを運悪く女子に見られて、 ちょっとした大騒ぎになったんだ。 @200 そしたら後日、シシトの使ったトイレに こんな落書きが残されててな……。 以来、ここはシシト専用トイレになって、 誰にも使われなくなったのさ。 @402 ちょっとした手違いって……。 一体、何があったんですか? @102 トイレ急いでて間違えました。 !se(Action)ビシッ @401 それだけ!? @100 でも、何も悪いことばかりじゃ 無かったんだよね……。 誰も使わなくなったおかげで、 いつ来ても確実に空いてたから……。 !se(Action)ビシッ @401 って、何度も使ったんですか!? @102 いや、だって、専用だし……。 @202 ……さすがシシトだ。 !mvnil @0 !mv !wait40 !mv本屋 !wait20 @400 ……ここ、図書室ですよね? 特に変な場所は無いように 見えるんですが……。 @200 だけど、ここにもシシトの足跡は ちゃんと残ってるんだぜ。 ほらっ、この年表を見てみろよ。 @400 ……\sドミノ事件? @200 シシトが貸し出し期限ギリギリの本を 大急ぎで返しに来た時のことさ。 その日、図書室の床は ちょうどワックスかけた直後で、 シシトの奴、思いっきり足が滑ってさ。 @102 勢い余って本棚に激突して、 全部ドミノ倒しのようにバタバタと……。 !se(Action)ビシッ @401 どんなコントですか、それ!? @102 残念ながら実話です。 @202 でもって、それから1週間の間は ずっと書庫整理やらされてたんだよな……。 @102 あの時は、関係ないリョウヘイにも 手伝ってもらったりしてたね……。 @402 なんていうか、お二人とも とんだ災難でしたね……。 @200 まっ、オレはともかくとして、 シシトはマジで大変だったからな。 よく文句も言わずに最後まで やり遂げたもんだぜ。 @102 途中で何度か逃げ出したくも なったんだけどね……。 自己責任と給食を支えに、 なんとか最後まで終わらせたよ。 !se(Action)ビシッ @401 給食が支えだったの!? @100 中学校にいれば、毎日ちゃんとした 昼ご飯が食べられるからね。 種類も豊富で、栄養もあるし……。 @202 ウチじゃロクな物が食えないって、 いつも\r[嘆,なげ]いてたもんな……。 @102 僕にとって、小・中学校は 給食を食べるための場所でした。 @402 それだけ、給食を食べるのに 必死だったんですね……。 @102 まさに、毎日がサバイバル。 @202 ……イヤすぎる。 @0 !mvnil !wait40 !bgm !wait60 @1 七影中学校に残る……数々の足跡。 もっとも、その大半は 僕の黒歴史だったんだけど……。 今となっては、どれもこれもが すごく懐かしい思い出で……。 そういうモノを見る度に、僕たちは、 昔の学校生活に思いを巡らせていた。 ……。 いや……\s僕たちじゃないか……。 僕と……\sリョウヘイは、\sね……。 !wait60 セトの記憶は……\s結局、戻らなかった……。 昔の思い出を、一緒になって 物珍しそうに見ることはあっても……。 当時の出来事は何も思い出せなくて、 話はそこで途切れてしまう……。 いくら期待をしても、全てが空回り…… \s得られるのは、失望感と後味の悪さだけ……。 僕でさえ、そう思ってしまうのに……。 セトは何も言わずに、ただ黙々と、 思い出の品を見続けている。 その姿は、なんだか頼もしくも見えて……。 そして……\sどうしようもなく\r[辛,つら]かった……。 !wait80 @0 !mv3F廊下 !bgm夜の静けさ !wait40 !se(Action)学内歩き @1 スタスタ @202 ……\sふうっ。 これで、覚えのありそうな場所は、 ほとんど回っちまったな……。 校庭に、体育館に、当時の教室……。 @102 教頭先生にお願いして、 実験室とかも開けてもらったし……。 後、どっか見る場所ある? @202 ……思いつかねぇ。 @402 私も、ちょっと検討がつきません。 !wait20 !se(環境)キンコンカンコン !wait200 !se @100 っと、部活動終了のチャイムだ。 @202 げっ、もうそんな時間か? @102 ……マズいね。 部活やってる生徒が帰って、 僕たちだけ残るワケにいかないし……。 @202 さすがに、先生には 迷惑かけらんねぇもんな。 時間も時間だし、 そろそろ切り上げるか……。 @402 ……そうですね。 @102 セト、ごめん……。 あんなに期待をさせておいて、 こんな結果になっちゃって……。 @202 いや、それを言ったら、 発案者のオレが一番悪いぜ。 @404 そ、そんな事ないです! 思い出せそうな雰囲気はありましたし、 それに、とっても楽しかったです! だから、二人は何も悪くありません! @100 セト……。 !wait20 @200 ……\sまあ。 アクアフロート回った時よりも、 確実にステップアップしてるもんな。 次は、きっと何か思い出せるさ……。 @404 はいっ! そうですよねっ! 次こそは……きっと……! !wait40 !bgm @400 ……\sえっ? @100 んっ? @200 どうした、セト? 何か、忘れ物でも……。 !se(Action)跳ね @404 @202 あっ! @103 ……っ!? !wait10 !bgm../bgs/(環境)心拍 !bgs../se/(Action)学内歩き @1 変化は突然に、そして一瞬で起こった……。 何かに気付いたかのように、 思わず、疑問の声を上げるセト……。 すると次の瞬間、セトは弾かれたように 僕たちの横を一気に駆け抜け……。 そのまま、廊下の向こうへと 走り去っていった……。 @103 セト、待って! @1 慌ててセトを呼び止める。 でも、その足が止まることは無く、 後ろ姿はどんどんと遠ざかっていき……。 やがて、セトの姿は視界から消え去り、 廊下に響く足音も、周囲の騒音に 少しずつ紛れていった……。 !bgs !se(Action)跳ね @103 くっ……! @202 あ、おいっ、シシトッ! !mvnil @1 こうしちゃいられない……! 突然の行動にイヤな予感がして、 僕はすぐさま、セトの後を追いかけた。 ……\sだけど。 !wait20 !bgs !wait20 !mv3F廊下 !wait20 @100 ……\sいない。 @1 廊下の角を曲がった先……。 そこに、セトの姿は無かった……。 @103 セト、どこにいるんだ!? @1 再び大声で叫んでみたけど、 返事は、どこからも返ってこない……。 かすかに聞こえた足音も途絶えて、 辺りに広がる、静寂な空間……。 教室に入ったのか、階段を使ったのか…… \sそれさえも、全く分からなかった……。 ……\sくそっ! これじゃ……どうしようも……。 !wait40 !mvnil @0 \f[10]ガシャン…… !mv3F廊下 !wait20 @100 ……っ! @1 ……何か聞こえた。 かすかに響く、金属が擦れるような音……。 方向は……。 !wait20 !se(Action)跳ね @103 こっちか! !mvnil @1 僕は音と直感だけを頼りに、 すぐ側の階段を一気に駆け上る。 ……\sあれだ! 階段の上に見える……金属製のドア。 きっと、あの先に……! !wait40 !bgm !bgs !se(Action)重いドア開け @0 !mv薙島高校 !wait20 @100 ……っ! @1 重たいドアを開け放った\r[途端,とたん]、 強い西日と吹き込む風を全身に受け、 思わず足が止まる……。 その瞬間、僕ははっと我に返って、 自分が今いる場所にようやく気付いた。 @100 こ、ここは……。 @1 薄暗く狭い校内の様子とは一転して、 明るく広々とした、その空間……。 \r[人気,ひとけ]の失せた学校の中にあって、 それ以上に何も無い、空っぽの世界……。 そこは、どんな学校にも必ずある…… \s何の変哲も無い、ごく普通の屋上だった……。 !wait40 @102 ……\sそうだった。 そういえば、中学校には こんな場所もあったんだよね……。 あんまり来ない場所だったから、 すっかり忘れてた……。 ……。 @100 ……あっ。 @1 そうして見渡した、屋上の片隅……。 そこに、よく見慣れた後ろ姿が一つ……。 !wait40 @400 @1 セトが、何をするワケでも無く、 ただ黙ってその場に立ち尽くしていた……。 @100 ……。 !wait40 !se(Action)学内歩き ……\sセト? @400 ……。 !wait60 知ってる……。 @100 ……えっ? !wait40 !bgm黄昏 @400 ……。 私……\sこの場所を知ってる……。 !wait40 !se(Action)跳ね !se @404 この場所……覚えてるんです! @103 ……っ!? @1 さっきまでの確信に満ちた足取り…… \sそして、振り返ったその表情……。 セトの一連の行動は、 実に単純な理由からだった……。 ……\sそう。 セトは……\sこの屋上の存在を しっかり覚えていたんだ。 !wait20 @400 ……。 でも……。 @100 ……\sでも? !wait20 @402 ……。 でも……覚えていたのは、 この場所があったってことだけ……。 私にとって、ここが一体どんな場所で、 昔、どんな事があったのかとか……。 そういう事については…… 何も、思い出せないんです……。 @100 ……。 そっか……。 !wait40 @1 \f[16]「……なんで」 @100 えっ……? !wait20 @1 「……」 「なんで……こんなにはっきりと  覚えてる場所なのに……」 「なんで……何も分からないんだろ……」 「やっと……きっかけを見つけたのに……」 「やっと……\s何か思い出せるって……」 「みんなと一緒に話ができるって……  \sそう……\s思ってたのに……」 !wait40 「……\sうっ……」 「ぐすっ……\sひっく……」 「なんで……\sひっく……\sなんで、なの……!」 @100 ……。 セト……。 !wait40 @1 ああ……そうだよね……。 いくら気丈に振舞ってても、 やっぱり、ずっと辛かったんだ……。 みんなが親身になって協力してくれるから…… \s自分も、早く思い出さなくちゃって……。 みんなが楽しそうに話をしてるから…… \s自分も、早く一緒になって楽しみたいって……。 その気持ちを誰にも言えなくて、 ずっと、プレッシャーになってたんだ……。 ……。 掴みかけた記憶を目の前にして、 堪えきれずに、\r[溢,あふ]れた涙……。 それが、全てを物語っていた……。 !wait40 @100 (……\sそうだよ) (今日のセト……朝からずっと  こんな調子だったんだ) (少し頑張りすぎじゃないのかなって、  最初から、気付いてたのに……) @1 ……何を勘違いしてたんだろう。 ただ、記憶を取り戻すことだけが……。 記憶のある状態に戻すことだけが、 セトのためになるんじゃない……。 本当に必要だったのは、今ある 焦りや不安を取り除いてあげること……。 僕たち、記憶を戻すことだけ考えて、 セトの気持ち、何も考えてなかったんだ……。 @100 ……。 !wait40 !se(Action)学内歩き !wait50 @1 ポンッ、ポンッ…… @100 セト……落ち着いて。 @402 ……\sあっ。 @100 この場所を覚えていただけでも、 十分すごいことじゃないか。 たとえ今が無理でも、もう少し経てば 何か思い出すかもしれないし……。 上手く行けば、他の記憶も 一緒に戻る可能性だってある。 悪いことばかりじゃないんだよ……。 @402 ……。 シシト、さん……。 @100 ……\sそれにね。 記憶があっても、記憶が無くても…… \sセトがセトだってことに変わりは無いんだ。 みんなと一緒に話すこともできれば、 一緒に笑うこともできるし……。 時には悩みを打ち明けたり…… \s\r[愚痴,ぐち]をこぼしたりしたって構わない。 セトがどんな状況にいたって、 僕たちは、みんな友達……。 一人だけ違うなんてこと、 無いんだからさ……。 @402 ……。 !wait40 @400 ……。 そう……ですよね……。 みんな……友達なんですよね……。 @100 ……\sうん。 !wait40 @102 ……って、あれっ? @400 ……? @102 いや、気のせいかな……。 こんな感じのシチュエーション、 確か、前にもどっかで……。 @400 えっ……。 !wait30 @404 \f[32]あっ!! @104 ビクッ!! @400 ……。 !wait40 そ、そうだ……。 私……ここで、シシトさんと 初めて会ったんだ……。 @102 えっ……? !wait40 @100 ……あっ。 !wait20 !mvnil @1 それは、僕がすっかり忘れていた、 中学時代の、とある思い出……。 中学2年になって間もない頃…… 僕は、何となく屋上に足を運んでみた。 すると、屋上に通じるさっきのドアが、 なぜか開けっ放しになっていて……。 気になってこっそり覗いてみると、 そこには、笑い声を上げる数人の生徒……。 そして、彼らに囲まれ\r[怯,おび]えている、 一人の女子生徒がいた……。 ……\s見た瞬間に分かった。 それは……典型的な校内暴力……。 いわゆる……いじめだった……。 !wait60 その後……何がどうなったのかは、 よく覚えていないんだけど……。 とにかく、その件がきっかけになって、 僕はいじめを受けてた子と知り合いになり……。 たまに廊下などで顔を合わせては、 色んな話をするようになった。 当時、まだ中学1年生…… \s銀髪が特徴的だった女の子……。 彼女こそが……\s犬山セト……。 この屋上は……\s僕がセトと 初めて出会った場所だったんだ……。 !wait60 @0 !mv薙島高校 !wait20 @100 ……\sそうだったね。 僕も……ようやく思い出したよ。 @402 ……\sでも。 やっぱり、会ったこと以外には、 何も思い出せません……。 @102 あっ、いや……それで十分だよ。 僕だって、ここで何やってたかは よく覚えてないんだもん……。 @1 昔、いじめがあったなんてこと…… セトには、まだ黙ってた方がいいよね。 そんな思い出、今言っても 辛くなるだけだから……。 !wait20 @100 (……\sそれにしても) (僕は、こんなに重要な場所の存在を、  今まで思い出せなかったんだ……) (この場所をちゃんと覚えていたら、  真っ先に来たはずなのに……) @1 まあ……無理もないか。 僕にとって、この学校での記憶は 「あの事件」が全て……。 それ以外の思い出なんて…… 事件の闇で、真っ黒に塗りつぶされて しまってたんだから……。 !wait40 !se(Action)重いドア開け ガシャン @100 ……んっ? !wait20 @202 やれやれ、こんな場所に いやがったのか……。 @402 あっ……。 @102 そうだ、リョウヘイのこと すっかり忘れてた。 @202 まったく、心配させやがって……。 どこか行きたい場所があるなら、 先に言ってから行けよな。 急にいなくなっちまうから、 マジで焦ったぜ……。 @402 ご、ごめんなさい……。 @200 まっ、何事も無かったみたいだし、 別にいいんだけどよ。 それとも……オレはお邪魔だったか? @102 いや、そんな事ないから……。 @404 ちょ、ちょっと思い出したから、 急いでただけなんです! @202 ……えっ? まさか……何か思い出したのか? @100 セト、この屋上があったことを しっかり覚えてたんだよ。 @400 私……ここで、シシトさんと 初めて会ったみたいなんです。 @200 ……\sなるほどな。 こんな場所に、そういう 思い出があったのか……。 ……。 @202 ……ってか、シシト。 お前、なんで今まで そのこと黙ってたんだよ? 超重要ポイントじゃねーか、ここ。 @102 いやぁ……僕もさっきまで 完全に忘れててさ……。 今も、具体的に何をやってたとか、 全然覚えて無いんだよね……。 @202 随分とピンポイントな記憶だな……。 @102 まあまあ、別にいいじゃないか。 一つだけでも思い出せたんだし、 今回は十分な収穫だったよ。 @200 まっ、そりゃそうだ。 思い出せてよかったな、セト。 @404 は、はいっ! ありがとうございます、岸さん! @200 じゃあ、そろそろ引き上げるか。 今から歩いて駅に向かえば、 ちょうど帰りの電車に乗れそうだぜ。 @100 うん、分かった。 セト、行くよ。 @400 あっ、はい……。 !se(Action)学内歩き @1 スタスタ !wait30 !bgm !wait30 @400 ……。 !wait40 シシトさんと出会った場所、か……。 なんで……これだけ覚えてたんだろ? 私にとっては、それだけ 大事な思い出だったのかな……。 !wait60 @403 ……。 そ、それって……。 もしかして、私……。 !wait20 @1 「セトー、もう行くよー」 @402 あっ、ごめんなさい! すぐに行きます! @1 タッタッタ…… !mvnil @0 !mv !wait80 @1 「だから……行こうぜ」 「オレたちが初めて出会った……  あの場所にさ……」 ……。 確かに……そうだった……。 辛いこと、思い出したくないこと、 いっぱいあったけど……。 あの時、僕たちはここで出会い、 多くの時間を共に過ごし、ここで別れ……。 そして再び、ここに戻ってきた……。 僕たち三人が共通して持っている、 思い出の中の1ページ……。 七影中学校という思い出の地は…… \s間違いなく、僕たちの原点だったんだ……。 !wait60 そんな事を考えながら……。 僕は、この場所を後にした……。 !wait100 @0 !mv \> \ \ \